猫轍守衛の偽業務日報

訳あって暇人やってる、その昔似非鉄道趣味者だったクズの毒吐きブログ。虎もライオンもデカい猫だけど、文句ある?

『精神障害者の「健康」と「くらし」を考えるシンポジウム』(2013.7.18開催)に行ってきた

先週の話になるのだが、奈良市西部会館で開催された『精神障害者の「健康」と「くらし」を考えるシンポジウム』にいってきた。なんでそんな小難しいイベントに行ってきたかというと、通院中の精神科の待合室にチラシが置いてあって内容が気になったからだが。
どんな内容だっだかというと、基調講演とそれに続いて奈良県内の精神障碍者当事者・支援者・治療者によるシンポジウムで、要は倭人の国の福祉政策は相変わらず精神障碍者に対して冷たすぎるわーその中でも特に奈良県は冷たすぎるわーだから現状認識して何とかしようぜというもので、ちなみに奈良県内の精神科医療関係団体のみならず奈良県奈良市も後援に加わっていた。
シンポジウムの実行委員会の代表のかたの挨拶の後、基調講演に。講演をされたのは岐阜勤労者医療協会みどり病院精神科医である渡邉貴博医師。『現在の医療と本来の医療の在り方について』というタイトルで、典型的な統合失調症患者の例(但しあくまで架空の例)と呉秀三・樫田五郎『精神病者私宅監置ノ実況及ビ其統計的観察』の有名な一節*1を皮切りに、現代日本における精神疾患の患者数とその内訳や国内外の自殺率の推移、その背景にあるベンゾジアゼピン睡眠薬の処方の濫発や向精神薬の多剤処方から抜け出せない日本の精神科医療が抱える臨床面での問題、現代日本の産業構造の変化や生活保護受給停止や路上生活者に関わる話、日本国内における精神科医精神科病院の病床数及び入院患者数の推移や日本の行政の精神疾患対策面での貧困な現状といった数多くの資料を提示されながら現在の日本における精神医療の現状及び問題点と、現在のイギリスにおける精神医療システムを例にどういうものに変えていくのが精神疾患を抱えるものにとって望ましいのかということを語られた。講演の内容としては特におかしなものではなく、倭人の国の標準的は精神科医療に関わる者なら大体知っているんじゃないかと思う話だったが、ただまあ奈良には平和会吉田病院というそこそこの規模の精神科病院がある訳で、そこの医師呼んだらよかったんじゃないのというツッコミが来そうだが、講演の本題に入る前の渡邉医師についての紹介及び本人による自己紹介にて今年の春まで吉田病院にも勤務されていたとの事で奈良県の精神医療の現状は知っておられる方である。*2 
その後休憩をはさんでシンポジウムに。登壇されたのは当事者代表として精神障碍者の男性、家族代表として奈良県精神障害者家族会連合会の事務局長である奥田和男氏、精神科医療関係者からは吉田病院看護師の奥口優人氏、奈良県精神障害者地域生活支援団体協議会代表のソーシャルワーカ中舎有子氏、そして本来登壇予定の無かった渡邉医師も飛び入り参加、進行役は奈良県精神科ソーシャルワーカー協会会長の野原潤氏である。
登壇された当事者や家族の方からはあまりにも赤裸々な今までの経緯が語られ、医療関係者の方からは現在試験的に実施されている奈良県精神障害者アウトリーチ事業の状況や当事者の人達が経済的な理由などで身体面での疾患になってもなかなか医療機関にかかりづらい現状について語られ、それらに対し渡邉医師からは先の基調講演の内容を引き合いにしつつ、イギリスでは精神障碍者に対する否定的な見方としての「リハビリテーション」から特性を生かす見方としての「リカバリー」に移行しており、世界的にもこの流れになっていて、日本では精神障碍者へ対する偏見が強いが、海外では誰でもなるものという見方になっているという話がなされた。その後登壇者の方々から精神障碍者に対する公的な支援やはりどうにかならんのかという意見が挙がり、それに対し助成制度を勝ち取るだけで終わりにするのではなくその先にどういう社会を作っていくのかということが大事だという渡邉医師の話でシンポジウムは締めくくられた。
個人的にはなかなか有意義な話が聞けて為になったのだが、ただ気になったのは登壇者が吉田病院の関係者が多かったせいかちょっと内輪ネタが見受けられたことか。まあそれすら無かったらもっとよかったのだが……

*1:「わが国何十万の精神病者はこの病を受けたるの不幸のほかに、この国にうまれたるの不幸を重ぬるものというべし」

*2:因みにみどり病院も吉田病院も民医連系の病院である。