猫轍守衛の偽業務日報

訳あって暇人やってる、その昔似非鉄道趣味者だったクズの毒吐きブログ。虎もライオンもデカい猫だけど、文句ある?

予定調和の見世物だった所に自分が波風すら起てられなかった件(阪急開業100周年記念シンポジウムまとめ(後編))

かなり今頃になってしまったが(何時もの事だが……)、前エントリ(http://d.hatena.ne.jp/nekotetumamori/20100806#1281113647)の続き。パネルディスカッションでの阪急角和夫社長とABC道上洋三アナの想定内な問題発言&爆弾発言の応酬の後、話題を切り替えるべくイベントプロデューサー茶谷幸治氏が提示したお題は「阪急はこれからどうあるべきか」という、ようやく本日のパネルディスカッションの本題突入というもの。
まずは倉田薫池田市長宝塚市の女性のパワーの凄さが羨ましいという一言から話が始まり、小林一三の考え方の原点に立ち返って欲しいとの意見。自治体も出来る事をやるので企業も「まちづくり」に『思い』と、それだけでなく『おカネ』も寄せて欲しいと本音をちらつかせて見たり、海外(特に中国)からの観光客誘致による地域活性化を進める為にも大阪空港を海外との窓口にしたらどうかという、『関空一元化』を唱える山中諄南海電鉄CEO・関西経済同友会代表幹事ら(勿論橋下徹大阪府知事も)の意見を牽制するかのような発言をしていた。
次に岡絵里子関大准教授。彼女が過去に行った鉄道網の恩恵を余り受け手いない一部の北摂地域に於ける調査の話をして、阪急が造り上げたのは「駅から歩いて帰れる文化」ではないかという指摘をしていた(但しそこには「最寄駅の無い人はかわいそうだ」と見做す余りにも一方的な味方がバックボーンにあった訳だが……)。そして阪急宝塚線の各駅は駅名標を見なくても車窓から判別が着くぐらい各駅の造り方に特色があるが、高架化等で改修された駅にはそれが感じられないと指摘し、駅の特色を無くす事だけは止めて欲しいとの意見。
そして再び倉田市長。岡准教授が駅の特色について振れたことを受け、沿線住民が楽しめるような駅作りをしたらどうかとの意見、その実例として池田駅前ビアガーデンや石橋駅と駅前商店街とを繋ぐ屋根付き連絡通路の設置(倉田市長曰く費用は阪急に出してもらったとの事だそうだが……。)を挙げていた。
ここで誰の言かは失念してしまったが、「駅を中心としたコミュニティが出来ている。」との指摘(この指摘をしたのが道上アナと角社長では無かった事だけは確か)。そして道上アナがそれを受けてラジオ番組でも同様かもしれないと、2007年に大阪城ホールで行った『おはようパーソナリティ道上洋三です』30周年記念公開放送に局の予想を大きく上回る来客数があった事(彼曰く本音はこの時の番組サブタイトル通り『1万人の六甲おろし』をやりたかっただけらしいw)や、阪神・淡路大震災の時に被災者から番組のお陰で励まされたという意見が寄せられたといったエピソード等を、『カネ』の話ばかりの今の世の中はもうたくさんだという意味合いを込めつつ語ると、今日のシンポジウムも『阪急ファン』の多さに驚いたが、ならばこのようなコミュニティの存在をもっと有効利用したらいいと提案した。
続いて参加者との質疑応答。色々とあったが西京極駅への特急停車の要求と宝塚ファミリーランド営業終了・閉鎖の件に対する質問以外はオタク視点の意見と阪急に対する賛辞なので忘れてしまった。なお西京極駅への特急停車要請は株主総会で同様の意見があった事、宝塚ファミリーランド閉鎖に関しては、ファミリーランドの売上は年間40億だったが運用・維持に50億かかり、年間10億の赤字でその上来場者数も落ちていた、しかし赤字事業の整理をするにしても宝塚歌劇のブランドを消す訳にはいかなかった(阪急ブレーブス売却も同様の理由だった)との角社長の弁があった。
実は私、この質疑応答の際に「今の阪急のやっている事は小林一三の『神格化』を始め自己満足の延長線上にあるのでは?」みたいな質問をぶつけてみようと試みて挙手したのだが、やはり上手く言えるかどうかという不安から引込思案になった事もあり、すぐに挙手する事が出来なかった。結果そのチャンスを逃すという情けない事になってしまった。
そしてディスカッションのまとめに。まずは岡准教授、最近の宝塚線には華やかな話題がないと言うも、沿線地域の事情に合わせたまちづくりが必要だとの意見。その具体例として公営の公共交通事業者に見られる無料フリーパス発行や、駅前再開発をマンションだらけにしない為にも行政による建ぺい率規制を提案していた。
次に倉田市長、岡准教授の提案を受けて、公営の公共交通事業者が無料フリーパスの類を発行するといった利益の出ない事が出来るのはその分を税金で補っているからであり、これは民間の同業者に委託した場合でも結局同じであるという事を説明、また沿線地域に点在する各施設を有効活用する為のネットワークを電鉄会社が作り上げるという話になった場合、株主がそれを評価するのか……という問い掛けの形を取った懸念を表すと、企業や自治体の経営に関しては長期的な視野が必要だという事、そして自治体の住民も何もかも行政任せきりの『おまかせ民主主義』ではダメだろうと語った。
続いて道上アナ、倉田市長の意見にほぼ賛同する意見を述べると、今後少子高齢化する社会を維持する為の増税は免れない訳で(但し彼は消費税増税には反対なのだそうだが)、ならば皆がもっと政治に関心を持って税収の使い道を可視化していけばいいし、その方が政治家にとっても都合がいいのではとの意見。ちなみに道上アナ、ディスカッションのどの辺りで言っていたかは忘れてしまったが、駅前のビル空き部屋に老人介護施設と託児施設が一体化した施設を設けたらとか、営業運転中の電車内で沿線地域で生産された農作物等の販売イベントをしたらとか、結構色々な提案をしていた。
そして角社長の謝辞があり、その後茶谷氏が小林一三が文学青年だったというエピソードにかこつけて、角社長が『岸一眞(きし・かずま)』のペンネームを持って宝塚歌劇の曲を書いている事を紹介すると、今度は茶谷氏、今から75年前、日本が戦争に突き進んでいった時代(正しくは当時日本では『支那事変』『日華事変』と呼ばれ、後に日本では『日中戦争』と呼ばれる十五年戦争の前半の頃というべきだが)に、小林一三が「阪急は従業員のものであり、株主のものでもあるが、同時にお客様のものでもあり、その三者が納得しなければ成り立たないのだから、ならば『阪急共栄体』(*)を作ってしまおうではないか。」という趣旨の事を言っていたというエピソードを紹介し、最後にこのシンポジウムに約500人の参加者が来た事に触れて、宝塚歌劇団の前身である宝塚少女歌劇団の初めての公演時の来客数が約500人だったエピソードを挙げて「今日まさにこの場に於いてそれが再現された。」と、阪急のこれからは大丈夫でしょうなノリで雄弁に締め括ってディスカッション終了。
まあ結局の所、「これからの阪急宝塚線沿線の『まちづくり』は企業も自治体も線引きなんか止めて住民の皆様と一緒にやっていきましょ。」という無難過ぎる結論出して終わったと。何だ結局ある程度の波乱も想定した上での予定調和かよ。しかも締め括り方普通にキモ過ぎるだろwまあオープニングにヅカ月組の劇団員連れて来てタカラヅカの曲歌わせて『ジプシー男爵』公演の宣伝をさせるとか(宝塚歌劇団月組公演『ジプシー男爵』の宣伝やってた件を前のエントリで書き忘れたorz余談だがディスカッションの所々にちりばめられた倉田市長の池田市の宣伝もウザかったが……w)、所詮案の定プロパガンダでしかなかった訳で、まあ阪急阪神ウォッチャーには香ばしい話題提供有難うございましたwwwという点では大いに参加した意味が有ったと言っても過言じゃなかったのかもしれないが、ならば尚更自分がちょっとした波風すら起てられなかった奴でしか無かった事を大いに悔やむべきか。
(*)『阪急共同体』の空耳かもしれない。ただ阪急と関わりの深い企業の中に社名に『共栄』の名を冠しているものがある(共栄ファーマシーや『森半』こと共栄製茶など)のを考えたらこちらかなと推して『阪急共栄体』と書いた。実は茶谷氏が角のオッサン=岸一眞である事を紹介し始めた辺りからメモ取るのが一気に馬鹿馬鹿しくなり、その辺り話の時系列も含めてきちんと覚えていなかったりするもので(汗)最もこのパネルディスカッションで出た他の話を全部メモしていた訳でもないのだけどね。従って『阪急共栄体』と『阪急共同体』のどちらが正しいか自信がないorz……前者で検索かけてみたけどトップに挙がってきたのが共栄ファーマシーのHP(http://www.k-ph.co.jp/company/index.htm)、後者で検索かけて挙がってきたのは全く関係ないサイトだしな。奈良市内に『小林一三日記』置いている図書館ないかな。もしかしたら以前ネタにした原武史氏の本に答えがあるかもしれないけど。